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2025

チームアップ!オペラ『泣いた赤おに』~それぞれの場で大きく成長した子供たち~

オペラ

2025/11/7

チームアップ!オペラ『泣いた赤おに』

~それぞれの場で大きく成長した子供たち~

実施概要
この夏、たましんRISURUホールで子供たちが4種類のワークショップ(《うた・合奏・演技》《工作》《PRのお仕事体験》《舞台裏のお仕事体験》)に取り組んできた「チームアップ!オペラ『泣いた赤おに』」。その集大成となる公演当日がやってきました。それぞれの役割から、新たな挑戦や発見をたくさん経験してきた子供たち……「オペラ」の舞台は、彼らにどんな成長をもたらしてくれたのでしょうか。

■取材日
 9月15日(月・祝)
■取材場所
 たましんRISURUホール(立川市市民会館)
チケットを切るのも、初めての体験!

「チームアップ!オペラ『泣いた赤おに』」の公演当日。会場のたましんRISURUホールには、公演を支える様々な役割の人たちが集まってきます。
開演は15時。しかしその準備は朝9時から始まっていました。まずは舞台や照明、ピアノ調律などのプロの大人たちが各々の持ち場で仕事をスタート。10時30分にやってきたのは「オペラの現場を見てみる《舞台裏のお仕事体験》」に参加する子供たちでした。彼らは来場されたお客様のチケットの半券を切る「もぎり」や、プログラムを渡す仕事を担います。
まだ誰もいないロビーに並び、さっそく「もぎり」の練習を。プロの案内係が先生を務め、「いらっしゃいませ」「チケットを拝見します」などのフレーズをみんなで復唱した後、「チケットをお返しする時は必ず両手で、お客様の方に向けて」とレクチャーを受けます。そして「スタッフ役」と「お客様役」に分かれ、実際のチケットを使ってロールプレイ。初めてもぎるチケットの感触にドキドキしつつ、丁寧にチケットを扱う子供たちに「ちゃんとお客様の目を見て『いらっしゃいませ』を言えていましたね」と先生もにっこり。一通りの練習を終え、ある参加者は「常に笑顔でお客様に接したいです。緊張するとすぐ真顔になっちゃうので」と語りました。
また「舞台裏のお仕事体験」では、お客様に向けた注意事項などをマイクでアナウンスする「影アナ」を担当するメンバーも。こちらもアナウンス原稿を渡され、練習に熱が入ります。「本公演には休憩がございません。あらかじめご了承ください」など、普段の生活では使わない敬語も盛り沢山。「本番では『どこで言葉を切ったら聴き取りやすいか』なども考えながら、とにかく聴きやすいように話したい」と、学んだことを生かして本番に臨みます。

開演直前もギリギリまで良いものを目指す

公演の準備が整った舞台には、夏休み期間の8月2日に行われたワークショップ「オペラに登場するものづくり《工作》」に参加した子供たちが制作した織物や、おにのお面が飾られています。前日の通し稽古(ゲネプロ)の際にそれを見に来た《工作》のワークショップ参加者は、「あ!自分のはここに飾られてる!」「自分が作った織物は、舞台に飾られるとこんなふうに見えるんだ」と感激や驚きの声を上げていたよう。単なる工作の楽しみだけでなく、「自分の作品が舞台に関わっていく」という新たなやりがいを感じられたことでしょう。
12時30分、本番前の舞台に上がってきたのは、ワークショップ「オペラの登場人物になる《うた・合奏・演技》」参加者の子供たち…またの名を“コロスたまっこ”(「コロス」は「コーラス」の語源になったギリシャ語の言葉です)。7月からこの日まで18回もの稽古を重ねてきた彼らはすっかり役者の顔!舞台に堂々と立ち、演奏や演技の最終確認をします。
まずは前奏曲の合奏。鍵盤ハーモニカやリコーダー・様々な打楽器での合奏は、練習で課題となっていた「合わせる」ということもしっかりクリアしていました。一方、歌や演技については本番直前でも細かい調整が入ります。「退場する時は爪先に意識を向けて足音を消して」「自分の声だけ考えるのではなく、その前に歌っている役者の声に合う歌声を考えて」……本番前の緊張感の中で子供たちの顔がキリッと引き締まり、演出助手・児童演技指導の伊奈山明子先生に指導されたことをすぐに直していきます。
そうできるのはきっと、これまでの練習を通して「みんなで本物の舞台に立ち、良い作品をつくるんだ」という、プロの舞台人ばりの目標を共有してきたから。「この作品の全部のために、みんながいるということを意識して」という先生の言葉に、“コロスたまっこ”たちは大きく頷き、最後の練習を終えました。

それぞれの場所で子供たちが大活躍!

14時15分、いよいよ開場です。ロビー入口のドアが開き、もぎり係の子供たちがお客様を迎えました。真剣な面持ちでチケットをもぎり始めた彼らでしたが、お客様に「ありがとう」と言われるたびに硬かった表情が緩んでいき、自然な笑顔になってきます。小さな子にはかがんでチケットを手渡したり、「こちらからどうぞ」と明るい声でお客様を誘導したりと、自分なりの工夫や優しさを生かした対応もできるようになってきました。
客席のスピーカーからはアナウンス係の声が。ちょっぴり緊張している声色ですが、一言一句を丁寧に発音する彼らの言葉は、とても聴きやすいものでした。ロビーには、ワークショップ「オペラを発信する《PRのお仕事体験》」の参加者が青おに役の黒田祐貴さんにインタビューしたレポートも掲示され、本格的なインタビューと文章力にお客様も足を止めて見入っていました。
そして15時、オペラ『泣いた赤おに』が開演しました。ナビゲーターの朝岡聡さんの解説の後、“コロスたまっこ”の子供たちが舞台へ上がり、前奏曲を合奏して物語がスタート!主役の赤おにやその親友の青おに、赤おにと仲良くなっていく村人たち、ナレーター役などの、プロのオペラ歌手の皆さんも、“コロスたまっこ”と何度も練習を重ねてきました。
“コロスたまっこ”の役どころは、素朴な村人風の衣裳の「里の子」と、葉っぱや水の妖精のような衣裳の「山の子」。最初はおにを恐れていた村人たちと赤おにがだんだん仲良くなり、友達になっていく……というストーリーの中で、赤おにの家を恐る恐る訪ねる村人たちに付いていったり、村人と赤おにが打ち解けるシーンで一緒に遊んだり……と、セリフや歌のないシーンでも全身の動作と表情で各場面の喜怒哀楽をめいっぱい表現します。
セリフなしで演技をするのは、言葉がある時よりむしろ難しいもの。この夏の間、彼らはプロの講師のもとで何度も稽古を重ね、首を向ける角度一つにしても練習を繰り返して、「自分がどう演技したら観客に伝わるのか」という難しさと面白さを学んできました。そんな彼らだからこその、一生懸命でかつ自分たちらしさが発揮された素晴らしい演技が、観客を物語の世界へどっぷり惹きこんでいきます。ストーリーの最後、赤おにが青おにを思って泣き叫ぶシーンでは、客席のそこここからもらい泣きする声が。オペラ歌手の皆さんとともに子供たちが表現した物語は、観客の心へ確かに届いていました。

「オペラ」がもたらした成長

物語が閉じると、拍手喝采のカーテンコール!“コロスたまっこ”のみんなの笑顔も、ライトに照らされて晴れ晴れと輝いていました。終演後は、《舞台裏のお仕事体験》のメンバーがロビーでお客様をお見送り。「ありがとうございました!」と笑顔で声を張り上げる彼らは、開場前の緊張の面持ちとは別人のよう。彼らもまた、今日1日で大きく成長したようです。
“コロスたまっこ”の子供たちは「みんなとできて、とっても楽しかった!」「オーケストラの音に迫力があってびっくりした」と、ここで出会った友達や新たな発見の数々が一生の宝物となった様子。また「もう1回やりたい!」「これからも続けたい」という声も……実はこのプロジェクトが始まる前、赤おに役を務めたオペラ歌手・宮里直樹さんはインタビューで「ここで一緒に歌った子供たちが成長し、いつかまた同じ舞台に立ってくれたら」と語っていました。宮里さんが夢見ているそんな日も将来、本当に来るのかもしれません。
(取材・執筆:小島綾野)

ネククリの裏側

「気づかれない」ことが大事な仕事!?

照明家の稲葉直人さんが信条にしているのは「お客さんに気づかれないこと」。
「照明がとても派手ならお客さんは『わあ、照明すごい!』と言うでしょうが、それは「作品への集中が照明に奪われてしまっている」ということ。だから僕はそれよりも、劇を見終わって帰っていくお客さんが『すごくきれいな世界観だったね』などと言っているのを聞く方がずっと嬉しい」と語ります。もし今まで舞台を見て「照明」を意識したことがなかったのならば、それは「これまでに見てきた舞台の照明の方たちが素晴らしい仕事をしてきた」ということなのかもしれません。

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