「観察眼」と「実践力」を養い未来のカタチをデザインする
発表会の冒頭、濱田教授は「自然物という、思い通りにならない崩れやすい素材を相手に、骨格から丁寧に構造を組み立てることで、素晴らしい作品が生まれました」と、このプログラムを総括。作品の大きさは様々ながら、細部の表情を追求した人、骨格の構造を深く探求した人など、それぞれの着眼点の多様性を称え、次のようにエールを送ります。
「立体造形感覚を養うことの本質は、自然環境問題のような巨大で複雑な課題に立ち向かうための基礎力を育むことにあります。環境問題のように、様々な事象が複雑に絡み合う問題に対峙するには、物事の細部まで見通す“観察眼”と、困難な課題に粘り強く取り組む“実践力”が不可欠です。自然物の構造を理解し、試行錯誤しながら形にするという一連の経験は、まさにその力を養う下地になると思います」。
続いて、尾形准教授が「制作の2、3日目あたりで、皆さんのアイデアが形になり始め、『もっと色々なことができるかもしれない』と可能性を感じられたのではないでしょうか。最後の仕上げは学生スタッフの力も借りましたが、そこまで“やり遂げたい”と思う気持ちが生まれたことが何よりも大事です。その探求心を、これからも持ち続けてください」と、参加者の今後の活躍に期待を寄せました。
最後に、濱田教授はこう締めくくりました。「これらの作品は、渋谷ヒカリエで多くの人に見てもらった後、この高尾の森に返します。自然から生まれ、やがて土に還っていく。この循環を感じることも、このプログラムの大切な体験です。サポートしてくれた学生スタッフたちも、まるで自分の作品のように熱心に取り組んでくれました。全員に、大きな拍手を」。
発表会を終えた子供たちは、このプログラムの体験を、こんなふうに語ってくれました。
「立体的な作品をつくるのは初めてで不安だったけど、すごく楽しかった。『ここが見せたいんだ!』という部分を強調できるのが面白い。濱田教授から『見る人の目線を誘導するようにつくるといい』とアドバイスをもらって、それはデッサンにも活かせると思いました」。
「最後までつくりあげることができて、感動しています。自分の中では100点の出来です! 絵を描くのは好きだったけど、こんなふうに彫像をつくるのも自分は好きなんだって、新しい自分を発見できました」。
このプログラムの名前である「Poiesis(ポイエーシス)」とは、ギリシャ語で「生産」を意味する言葉。それは、自然の中に隠れている豊かなものを無理をさせずそっと引き出してくるような、優しいアプローチを指します。5日間、彼らは自然と対話し、自らの手で新たな命を吹き込み、まさに「Poiesis」を実践しました。