自分の「内面」を意識して、今の自分の「自画像」を描く
「『自画像』を描くー藝大油画の伝統に倣って」講師:宮本武典(美術学部絵画科 准教授)ほか
東京藝術大学の上野キャンパスには、美術学部と音楽学部の施設が集まっています。美術学部の絵画棟では、宮本武典先生による〈「自画像」を描くー藝大油画の伝統に倣って〉が行われました。このプログラムでは、写真では捉えにくい自分の「内面」を意識して今の自分の自画像を描くというお題が出され、子供たちはまず、写真家の志鎌康平さんにポートレートの撮影をしてもらいました。
明るいアトリエ空間に並ぶ机の上には、自画像用の鏡が1人1台用意され、撮影されたポートレートを横に、写真に写る自分と鏡の中の自分の姿とを見ながら、集中して制作していきます。子供たちの中には、宮本先生やアシスタントの学生から「白をもっと使ってもいいと思う」「背景の描き方を工夫してみるのもいいよ」などのアドバイスを受けたり、普段の興味や将来についての会話をしながら制作する子も。周りを気にせず、鏡やポートレートを見つめながら自分のペースで描き進めている子供もいて、みんなそれぞれの方法で制作を進めていました。
完成した作品は、隣接するギャラリースペースにポートレート写真と並べて展示され、鑑賞と講評の時間が設けられました。子供たちが「もっと肌の色をきちんと描きたかった」「暗く描いた部分で、自信と不安が同居している点を描いた」など自分の作品について説明し、それに対して先生からは「今の君らしい絵になっている」「写真にはない二面性が出たね」などの講評が。それぞれの充実した制作体験をみんなで共有しました。子供たちが自分の表現に対して真剣に考え、自分の言葉で思いを伝えていた様子が印象的でした。作品は油画専攻の伝統に倣い、そして長期保管できる収蔵箱に入れて持ち帰ってもらうという、素敵なプログラムになりました。