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2025

映画と夏の7日間 〜ついに迎えた上映会! みんなで振り返る映画制作の日々〜

映画

2025/11/14

映画と夏の7日間

〜ついに迎えた上映会! みんなで振り返る映画制作の日々〜

実施概要
子供たちで物語を考え、撮影や編集にも挑戦する、映画づくしの7日間のプログラム。これまで、4つの班に分かれて撮影や編集に挑戦してきましたが、それぞれに映画を完成させ、ついに東京都写真美術館での上映会の日を迎えました。上映後には、班ごとにステージに上がって質問に答えたり、制作秘話を話したりと、子供たちが作り手として頼もしい姿を見せてくれた、最終日の様子をお伝えします。

■取材日
9月21日(日)上映会
■取材場所
東京都写真美術館1階ホール

会場を盛り上げた迫真の演技と、心の動きを丁寧に描いた演出

上映会の会場となる東京都写真美術館1階ホールにやってきた子供たちは、誇らしげな様子を見せつつもどこか緊張した面持ち。保護者の方と分かれて席に座り、同じ班の友達やリーダーと合流すると、やっと安心したように笑顔になりました。
上映会は、子供たちの挑戦を見守ってきた是枝裕和監督と砂田麻美監督の挨拶から始まりました。「こんなに素敵な会場で上映できるなんて、プロの作り手でもなかなかないことなので、僕も楽しみにしてきました」。7日間の映画制作の様子をまとめたメイキング映像が流れると、いよいよ最初の作品が上映スタート!

最初の作品は、『虹色のかぶりもの』。不思議な四次元空間に突如“DJ変態”が現れ、子供たちを恐怖に陥れるというストーリーです。“DJ変態”の迫真の演技に客席は大盛り上がり!子供たちを襲う時の効果音など、ワークショップ3日目の東宝スタジオの見学で体験したフォーリー(映像に合わせて効果音をつける)が活かされた作品になっていました。

上映後の舞台挨拶では、子供たちの指導やサポート役として各班についたリーダーと一緒に登壇。リーダーが作品の感想を尋ねると、「かくれんぼや鬼ごっこを混ぜた話にしようと思いました」と話す子供たちの言葉に、是枝監督は「あぁ、なるほど」と頷きます。「撮影をした都庁って、歩いていると結構迷うんだよね。子供たちが、そういう経験から四次元空間という舞台を考えたのは、すごく面白いなと感動しました」。
また、「最初に女の子たちが本を開いて物語が始まり、最後に閉じて物語が終わるというシーンがあったけれど、どうしてこのシーンを入れたの?」との質問に、「最初、男子が中心に物語を作っていったのだけれど、話がごちゃごちゃしてきちゃったから、物語をまとめるために入れました」と女の子が説明。「すごくいい判断だね」と是枝監督が驚く場面もありました。

保護者からは、「家でストーリーを聞いて、どんな話になるのか想像ができなかったけれど、映画を観たら子供の頭の中を知れたような気持ちになりました」と感想があがりました。壇上でマイクを渡され、なかなか言葉が出てこない子がいると、他の子が「こういう場だから緊張しちゃうよね!」と場を和ませ、お互いに助け合っている様子も印象的でした。

次の作品は、『けんばんを通じて』。けんばんの発表会を控え、器用な弟と自分を比べて自信が持てない主人公の物語です。ひとつひとつのセリフや演技にこだわったという本作には、誰もが経験したことのある悩みや、心が通じ合った時の喜びが丁寧に描かれていました。

「主人公と弟、親友を演じた3人が、それぞれ自分の役をよく理解して演じていましたね。配役はどうやって決めたの?」という是枝監督の質問に、「主人公をやりたかったけれど自信がなくて。でもみんなが、 “それなら主人公と同じ性格だからぴったりだよ”と言ってくれました」と主人公を演じた男の子が答えます。
是枝監督が特に驚いたと話したのは、心の動きを映し出したカメラワーク。「親友と練習をするシーンを、空が見える開放的な場所で撮っていたり、発表会の後に映る青空には飛行機が飛んでいたり、主人公の気持ちが見えるようで、ちょっとびっくりするくらい感動しました」。

保護者から「チームワークの良さが伝わってくる作品でした」と感想が挙がると、子供たちも「役ではいじわるなセリフを言う場面もあったけれど、現実では結構仲良くなれたと思っています!」と笑顔で話していました。

目線の高さを変えたユニークな映像と、即興のセリフで紡がれる会話劇

三作目は、持ち主と離れ離れになってしまった消しゴム“ケシゴムー”の冒険を描いた、『持ち主探せ!ケシゴムー』。小さな“ケシゴムー”の視点から景色を映したり、人間に変身して歩き回ったりと、目線の高さを変えるカメラワークや遠近法を使ったアイデア溢れる撮影方法に、観客席からも「おぉ!」と驚きの声が上がりました。

是枝監督が「消しゴムが人間になって最初に歩く時に、壁に手をついたり、植物を触ったりしていたのがリアルで良かったね。自分で考えたの?」と聞くと、演じた男の子が「もし僕がアリとか小さな生き物から人間に変身したら、まずは周りにあるものをいろいろ触るだろうな、と思って葉っぱを触りました」と答えました。
また、4日目のワークショップで特別講師として教えてくださった撮影監督の上野千蔵さんからは、「消しゴムの視点で世界を映し出すというアイデアがとても面白かったです」との感想も。

この班では、カメラやマイクなどの撮影係を全員が持ち回りで担当していたため、「マイクが映り込まないように棒を長くしたら、重くなって大変だった」など、機材にまつわるエピソードも飛び交います。保護者からの「ひとつひとつの物にもし命があったら、という新しい視点をもらいました」という感想に、子供たちも嬉しそうな表情を浮かべていました。

最後の作品は、絵を描くのが大好きな主人公とライバルのクラスメイト、新しくやってきた転校生の3人の物語を描いた『おい山田』。撮影中、他の班の間でも流行語になっていた、「おい、山田!」という印象的なセリフをはじめ、即興で紡がれる会話のやりとりが印象に残る作品でした。

班のリーダーが「長いシーンもアドリブで演じきっていてみんなすごかった」と振り返ると、「誰かが笑い始めると、みんなも笑いが止まらなくなっちゃって大変だった」など、子供たちは“即興”ならではのエピソードを披露。是枝監督からは、「他の班も撮影に使っていた、都庁の中にある特徴的な階段を、ここは仲直りの場所として使っていたね。同じ場所でも全く違う印象に見えるのが、映画の不思議な力だなと改めて感じました」との感想もありました。

保護者からの、「知らない子が多い場所や、新しい環境に飛び込むのが苦手な子だったけど、撮影中にリーダーシップを発揮していたと聞いて、この期間に成長したんだなと感じました」という言葉に、会場にいたスタッフや班のリーダーたちも頷いていました。

4作品すべての上映と参加者の舞台挨拶に続いて、是枝監督と砂田監督、今中康平監督によるトークセッションが行われました。「映画作りの中で、誰一人として“私は関係ない”とならなかったのが、本当にすごいことだと思いました」と砂田監督。今中監督は「大人の様子を伺うのではなく、子供たちは最後まで自主的に、自由に撮ってくれました」と振り返ります。
最後に、「今回、子供たちが挑戦する中で発見し、表情を輝かせる場面に何度も立ち会うことができました。映画制作を通して、みんなにそうした発見がひとつでもあったのなら、やって良かったなと思います」という是枝監督の言葉で、7日間のプログラムと上映会は幕を閉じました。

7日間で作り上げたチームワークと、映画を通して見つけた新しい視点

夏休みの間、映画制作に向き合う日々を過ごしてきた子供たちは、最終日に“自分の作品を人に観てもらう”という、特別な体験を味わいました。「大きなスクリーンで上映して、拍手をもらう。壇上に上がって、自分の言葉で映画について説明する。そこまで含めての映画作りだと思います」と話していた是枝監督。少し恥ずかしそうに壇上に上がる子供たちも、作品について質問されると、自信に溢れた嬉しそうな顔で、“作り手”として堂々と答えていました。

上映会の後、別れを惜しむように話し込んだり、連絡先を交換し合ったりする子供たちの姿が見られました。映画を通して仲間と出会い、何度も同じシーンを撮り直すなど、時に失敗しながら一緒に挑戦を続けたこと、映画制作の中で見つけた新しい視点が、今後子供たちの毎日にこれからどう繋がっていくのか、とても楽しみです。
(取材・執筆:安達友絵)

虹色のかぶりもの

けんばんを通じて

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おい山田

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