アート・コミュニケーション
Museum Startあいうえの プログラムオフィサー
石丸 郁乃
東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助手
Museum Start あいうえの プログラムオフィサー
多摩美術大学美術学部芸術学科卒業。東京都美術館アート・コミュニケーション係や平塚市美術館での学芸員としての勤務などを経て、2021年より「Museum Start あいうえの」 プログラムオフィサーに着任。
講師からのメッセージ
社会にアクションを起こす人が増えれば、
社会のより良いカタチが少しずつ見えてくる
アート・コミュニケーション
Museum Startあいうえの プログラムオフィサー
東京藝術大学 芸術未来研究場 ケア&コミュニケーション領域 特任助手
Museum Start あいうえの プログラムオフィサー
多摩美術大学美術学部芸術学科卒業。東京都美術館アート・コミュニケーション係や平塚市美術館での学芸員としての勤務などを経て、2021年より「Museum Start あいうえの」 プログラムオフィサーに着任。
美術館で作品を見るだけではなく、異なる背景や特性を持った人たちが、どうしたら美術館で共に楽しむことができるのかを話し合い、プログラムのアイデアや企画を一緒に考え、実際にやってみるまでを体験してもらおうと考えています。
私が携わっている「Museum Start あいうえの」では、参加する子供たちが、親でも先生でもない「第3の立場の大人」であり多様な背景を持つアート・コミュニケータと作品や資料を介して対話をしながら、美術館や博物館などで、何を、どう学んでいったらよいのかを知るきっかけとなるようなプログラムを行ってきました。
今回の内容もそれを活かしたもので、「技術や知識の習得」だけではない、「美術」「芸術」でも括れない、広い意味での「学び」を体験してほしいです。
例えば、初めて会う人といきなり「対話してください」と言われても、戸惑いますよね?
でも、アートを介することで、それがフックとなりコミュニケーションを取ることができると思います。今はネットで調べれば一通りの情報を得ることはできますが、実際に足を運んでしか得られないことがたくさんあります。
美術館に足を運んで「本物」を見て、大きさや素材、展示されている空間の雰囲気を体感してほしいです。あと人との出会いもそうですね。実際に会って話すことでしか分からない、その人を感じてほしいです。体験と学びはひと続きにあると思います。
実は私の家が東京都現代美術館のすぐ近くにあったので、母が無料で参加できるものを探してくれて、小さい頃からワークショップに参加したり、展示を見に行ったりしていたんです。
あと高校生の時、課題で美術館の学芸員へインタビューする機会があり、そのことで「美術館で働く」という具体的なイメージを描くことができました。「美術館に行ってレポートを書く」宿題で先生に褒められたこともありました。今思えば、生活や教育を通して芸術に触れたことがアートへの扉を開くきっかけだったのかなと思います。
日比野克彦さん監修の『空の芸術祭』(2011年)をお手伝いした際、参加した方から感想をいただいたことがありました。「塞ぎ込んでいた時期だったけれど、もっと外に出てみようと前向きな気持ちになれた」と伝えてくださったんです。
芸術祭には、様々なアーティストが参加していたのですが、開催場所であった団地の住民の方たちと一緒に作り上げていく作品も多く、その方も作品制作やガイドツアーなどにたくさん参加や協力をしてくれていたので、驚きました。それまで作家や作品、美術館など「分かりやすいもの」しか見えてなかったのですが、アートの人の心を動かす力や社会とつながっていく面白さといった、それらと人との間にあるものを学びました。その実感が、今の道につながっていると思います。
美術館は公共の場所、つまり「みんなのもの」です。
だから、美術館を自分たちのものとして自覚的に利用するだけでも社会参加になると思います。美術館には過去から大事に守られてきた作品や資料があったり、今を生きる作家たちが生み出した作品が展示されていたりしますが、そこから私たちは何かを受け取って、活かして、未来に繋いでいくことも大事な役割です。
大きなアクションではなくても一人ひとりが考えていければいいのではないかなと思います。また、美術館はいろんな人が訪れ、出会う場でもあります。そこで、多様な人と一緒に過ごすためにはどうしたらいいのかを考えることも社会につながる機会です。
今回のプログラムでは、実践まで行ってもらうので、社会にアクションを起こすことも学ぶことができます。ここでの経験が、子供たちが未来で社会にアクションを起こすきっかけにつながっていけばいいなと考えています。
子供が「美術や芸術が好き」って言ったら、一緒に美術館に行ったり、アートに関する本やイベントを紹介したり、子供の「やってみたい!」を後押ししてあげてください。
高校生までは無料で入場できる美術館も多くありますし、無料で参加できるイベントなどもたくさんあります。
また、実際に体験してみた子供に、「どうだった?」「何を感じた?」と聞いてみてください。話すことで、子供の学びはもっと深まります。また、子供が美術を学べる学校へ進路を考えていたら、オープンキャンパスの情報や美術や芸術が学べる学校・学部を、一緒に調べ、選択肢を広げてあげるのもいいかもしれません。
(取材・執筆:小原明子)