ファッション
ファッションデザイナー・アーティスト
コシノ ヒロコ
大阪、岸和田生まれ。文化服装学院在学中よりデザイナーとしてのキャリアを重ね、東京、大阪、パリ、ローマ、上海などでコレクションを発表してきた。アーティストとしての絵画制作活動にも情熱を傾け、2013年にはKHギャラリー芦屋をオープン。1997年第15回毎日ファッション大賞、2001年大阪芸術賞受賞。
講師からのメッセージ
子供から出たアイデアは絶対に否定しない。
大切なのは、発想を形にすること、
その子の個性が発揮されること
ファッション
ファッションデザイナー・アーティスト
大阪、岸和田生まれ。文化服装学院在学中よりデザイナーとしてのキャリアを重ね、東京、大阪、パリ、ローマ、上海などでコレクションを発表してきた。アーティストとしての絵画制作活動にも情熱を傾け、2013年にはKHギャラリー芦屋をオープン。1997年第15回毎日ファッション大賞、2001年大阪芸術賞受賞。
ファッションアカデミーでは、“ヒロココシノ”ブランドの残布やその他布地メーカーさんからいただく端切れ、パーツなどを自由に使って、ぬいぐるみに着せたい洋服を制作します。初日に行われる文化服装学院のテキスタイル講習では、洋服に使われる生地がそれぞれどんな繊維で作られているのか、素材サンプルなどを使って学ぶ時間もあります。ファッションムービー制作では、モデルやカメラマン、ヘアメイクなど、各専門分野のプロと共にブランドやファッションの世界観を表現し、ファッションムービーに仕上げるところまで体験します。昨年はファッションショーを作りましたが、ショーとして上演するのか、映像にするのか、という見せ方の違いで、ムービー制作も、たくさんの人が作り上げる総合芸術であることは同じです。
緊張している子、「将来はブランドを持ちたい」と話す積極的な子、と個性はさまざまでしたが、私が大事にしたのは、子供たちから出たアイデアを絶対に否定しないことでした。
その子の個性が出てくること、諦めずに発想を形にすることが何より大切ですから。
子供たちも、生地をピンで止めたり、ジャキジャキと布を切って重ねたりと、感覚的に表現すること、自分の手で作り上げていく経験を楽しんでくれて、家に帰ってから、夢中で絵を描き続けていた子もいたようです。
学校では、一通り習いますが、専門的なこと、何かに特化した技術というのは、なかなか体験できませんから。
私も子供たちからたくさんの刺激を受けて、「これから洋服やものを作る時には、12歳の眼差しを持とう!」と思いました。
小さい頃から絵を描くのが好きだった私は、絵を描く仕事に就きたくて、美術大学に進学するための勉強をしていました。
ところが、洋裁店を営んでいた母親は美大に行くことに大反対。
そんな時に出会ったのが、画家であり、洋服のデザイナーでもある中原淳一さんが描いたスタイル画でした。
若い女の子たちに人気で、クリエイティブな中原さんの絵を見た時、「ファッションと絵を描くことを一緒に形にすれば、洋服の道に進んでも、絵を描き続けることができる!」と思い、ファッションデザインの勉強をするために、東京の文化服装学院に入学しました。
ローマの「アルタ・モーダ」というファッションショーに、日本人として初めて参加した時、独自のコンセプトを持つことが大事だと考えました。
そこで私が考えたのは、日本文化の土台である“四季”を感じられる場所で、自分のデザインに向き合おうということ。
仕事場として移り住んだ家は、狐や猪が出るような山奥でしたけど、街の中にはない、春夏秋冬の色彩を豊かに感じることができましたし、仕事のために住む環境を変えたことは、私にとっての一つの転機となりました。
技術や自分の感覚を必要とする仕事であればあるほど、子供の時から学ぶことが必要だと思います。
昨年のプログラムでも、子供たちの目の前でスタイル画を描きましたが、“生で見せること”が、どれだけ力強いことなのかを実感しました。
最初はマジシャンのように見えるかもしれないけれど、そこで自分の理想像ができて、到達するための努力が早くから始められたら、将来素晴らしいクリエイターが生まれるはずです。
絵を描くことが好きで、それがファッションデザイナーの道につながった私のように、どんなアートも子供の世界を広げる可能性があります。
このプログラムでは、学校や家庭では教えることのできない学びを専門的な立場からサポートし、自分の手でものを作り出すこと、自分の主張をのびのびと表現することの楽しさを知る、自由で前向きな場にしたいと考えています。
(取材・執筆:安達友絵)