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講師からのメッセージ

日比野 克彦

学校ではできないものづくりを体験して、
その経験を生かしていってほしい

オープンキャンパス

東京藝術大学長 アーティスト

日比野 克彦

1958年岐阜県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了。国内外で領域を横断する多彩な活動を展開。2022年より東京藝術大学長に就任し、現在、岐阜県美術館、熊本市現代美術館の館長なども務める。現代に於けるアートの更なる可能性を追求し、学外との連携なども積極的に行い、「アートは生きる力」を研究、実践し続けている。

―「キッズユースオープンキャンパス 東京藝術大学」では、どんな体験が出来ますか

大学のアトリエや工房、音楽ホールなどを会場として、多彩なプログラムを展開します。僕が担当する「地域でのアート活動」では、藝大の周辺地域でフィールドワークして体験したことをもとに、新聞をつくるという体験ができます。他にも、大きな花を作るプログラムや、尺八を吹いてみるプログラム、工芸科の設備を活かして金属工房でアクセサリーを作るプログラムなどバラエティに富んだ内容なので、興味に応じて参加するものを選んでもらえます。

―プログラムの魅力を教えてください

138年の歴史をもつ藝大の伝統的・本格的な環境を体験できます。文化には学校で教えられるものと、そうでないものがある。同じ年齢しかクラスにいない、教室でみんな同じ方向を向いて1つの正解を目指すということではなく、学校のハード的な、年齢的な枠を飛び出してみる。藝大には、そんな多様な交流を受け入れることができる環境があります。
子供が日常で出会う大人って、親や親戚のおじさんおばさん、学校の先生くらいだと思います。オープンキャンパスに参加することで、普段出会えない大人に会える。その経験が将来の役に立つと思います。

―現代美術家を目指した動機や、子供の頃きっかけになった経験はありますか

小学生の時、クラスメイトが子犬を拾ってきて、じゃあその子犬をどうするかっていう議論をしながら、クラスで飼うということがありました。日曜でも餌やりに行って、大きくなってきたら犬小屋をつくる、みたいなことをさせる学校でした。ある出来事に対して、きちんと向き合って、クラスメイトと相談してやることを決めて、ないものは作る。協働型のプロジェクトですよね。
もう一つ、バス通学している子供が多かったのですが、夏にバス停前のクーラーが効いていてお茶も飲める建物があったのです。僕たちは何も知らずにそこでお茶を飲んで涼んでいたのですが、ある時先生から「みなさんが利用している建物の方から電話がありました。あそこは待合所として使う場所ではなくて、銀行なんですよ。」という話がありました。でも良かったのは、それで終わりにせず「銀行のお茶」っていうシナリオを先生が書いて、みんなで演じるお芝居にして、それを銀行の人に見てもらうという授業をやったんです。ただ叱るのではなく、僕らには悪気は無くて、ありがたくバスを待たせてもらっていたということを芝居で伝えた。思い返せば社会の中での出来事、自分の体験というものが1つの表現として形になるっていうことで、今やっていることと同じだと思います。先生に感謝ですね。
授業の風景は覚えてないけれども、こうした経験は上書きされないので、ずっと記憶として残っている。それが人の文化的な豊かさ、人間の感性をつくっていくと思うんですよね。授業で知識を得られるとして、感性を育むためには、こうした体験がとても重要だと思います。

―参加者に伝えたいこと、感じ取ってほしいことはありますか

熱中できること、表現したいことを見つけて、やってほしい。それぞれのプログラムを担当する講師もみんな、「これがやりたい!」という気持ちで参加しています。
藝大の中で今度、東京マラソンに参加して感じたことを作品にするという機会があるのですが、フルマラソンって実際に走ってみると37キロ地点あたりが一番きつくて、普段出さない「あ”〜っ!」というような声が出た。それを作品として表現したいと言っている学生がいます。
そのように、実際のいろんな体験の中から表現したいことを見つけてほしいと思います。

―保護者の方にメッセージをお願いします

学校教育の中で部活が外出しされたように、文化的な活動もますますそうなっていきます。本当は日常的に触れられる方が面白い。文化の教育自体をアップデートしていかなきゃいけないと感じています。
藝大という環境を体験しながら何かものを作って、それをふとした時に思い出してもらえればいい。このプログラムに参加することで、大学でいろいろなことを学んだり、社会に出たりしてからも、その経験を仕事に生かすという子供も増えていくと良いと思います。

(取材・執筆:橋本 誠)

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