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2026

キッズユースオープンキャンパス(東京藝術大学) ~正解のない自由な表現へ! 自分の感性を解き放つ一日~

オープンキャンパス

2026/10/30

キッズユースオープンキャンパス(東京藝術大学)

~正解のない自由な表現へ! 自分の感性を解き放つ一日~

実施概要
東京藝術大学の上野キャンパスで、小学生から高校生までの子供たちが、芸術の多彩な魅力や自分の創造力をかたちにする面白さに触れて体験できる、6つのプログラムを実施しました。

1. 「自画像」を描く-藝大油画の伝統に倣って
2. 地金からつくる金属のアクセサリー
3. 自分だけの大きな花をつくろう!
4. 藝大とあそぼう「打楽器解体新書」
5. 日本の楽器「尺八」 聴いてみよう・吹いてみよう
6. 地域でのアート活動 フィールドワーク

芸術を学ぶ大学のアトリエや展示会場という特別な空間で、先生や藝大生たちと共にアート作品づくりや音楽の楽しさに触れた充実の1日の様子をご紹介します。

■取材日
 8月7日(金)
■取材場所
 東京藝術大学上野キャンパス
写真とは違う“自分の内面”を描く
「『自画像』を描く-藝大油画の伝統に倣って」

美術学部の絵画棟で行われた「『自画像』を描く―藝大油画の伝統に倣って」は、写真では捉えにくい“内面”を意識して、今の自分の自画像を描くというプログラムです。最初に、宮本武典先生から「これは、油画(西洋画)専攻の4年生たちが実際に行っている卒業課題と同じで、東京藝術大学の大学美術館には卒業生たちの作品がすべて収蔵されています」とお話がありました。
続いて、写真家の志鎌康平さんにポートレートの撮影をしてもらいます。カメラを向けられて緊張する子供たちは、「何をしている時が楽しい?」「10年後の自分はどうなっていると思う?」という志鎌さんの質問に答えていくうちに、自然と笑顔になりました。

次はアトリエに移動し、先ほど撮影された写真の自分と、手鏡の中に映る自分、その両方を見ながら、クレヨンや水彩絵具を使って自画像を描いていきます。すぐに描き始める子、しばらく考えている子と、それぞれのペースで白いキャンバスに向き合う子供たち。宮本先生からは「自分の好きなものを思い浮かべてもいいよ」「頭で考えすぎて止まっちゃう時は、まずは手を動かしてみよう」とアドバイスがありました。
完成した自画像は、ギャラリースペースの壁に写真と並べて飾られ、最後は鑑賞と講評の時間です。子供たちは「右側は人から見た自分で、左側は自分の内面を描きました」「悩むのは苦しいけど、それも自分を作っているひとつの色だと思って描きました」など、自分の考えをしっかりと言葉にしていました。その姿からは、このプログラムを通して、“今の自分”と向き合う特別な時間を過ごしたことが伝わってきました。

最後に宮本先生から「今日描いてくれた自画像は、今のみんなを記録する大事な作品です。大人になった時、タイムカプセルを開けるような気持ちで見てください」とお話があり、子供たちは収蔵箱に納められた作品を大切そうに抱えながら帰っていきました。

柔軟に形を変える金属で、自分だけのアクセサリーを作る!「地金からつくる金属のアクセサリー」

金工棟で岩田広己先生、志村和彦先生、三枝一将先生の指導のもと行われた「地金からつくる金属のアクセサリー」は、日本に古くから伝わる金属工芸「金工(きんこう)」を体験するプログラムです。
「金工」とは、金属を熱して溶かしたり、金槌で叩いて形を変えたり、表面に細かな模様を彫ったりして、さまざまな形を作る技術のこと。子供たちはまず、錫(すず)という、融点が低く扱いやすい金属の特性について学びました。金属は硬くて冷たいイメージがありますが、技術と表現によって、とても温かみのある表情に変わることが伝えられます。
工房では、まず思い思いに自分の作りたいアクセサリーの形をスケッチします。動物やキャラクター、自分のイニシャルなど、アイデアは様々。その形に、普段から使用し加工がしやすい「厚紙」を切り抜いて型にするか、または食べ物としてのイメージが強いものの、高熱の金属にも耐え、細かな模様も彫り込める「イカの甲(コウイカの骨で、貝殻のように固くなっている部分)」を削って型にするか、先生と相談しながら決めていきます。

自分の型が完成すると、続いて先生が錫を流し込む工程です。231.9℃で溶ける錫(すず)のドロドロに溶けた状態に、子供たちは興味津々! 身を乗り出して形が変化していく金属を見つめます。水で冷やして固まった金属を型から取り出し、ヤスリで出っ張りやギザギザを取り、鏨(たがね)という道具で表面に模様を刻んでいく姿は、まるで職人のよう。
自分の頭の中にあった形が、「金属の塊」となり、磨かれ、光沢を放ち、世界に一つのバッジやペンダントとなりました。子供たちは出来上がったばかりのアクセサリーを身につけてみたり、家族に見せたり、嬉しそうに眺めたりしていました。

「花の形」に正解はない!自分の「作りたい」を自由に表現
「自分だけの大きな花をつくろう!」

丸山素直先生による「自分だけの大きな花をつくろう!」では、総合工房棟で色とりどりの巨大な画用紙を用い、自分の身長を超えるほどもある「大きな花」を作りました。
「藝大は、人と全然違うものを作ると褒められる不思議な大学です。正解はないから、お花に見えない形になっても大丈夫。作りたいものを藝大生のお兄さん、お姉さんに相談してみてね」。丸山先生の言葉が、子供たちの自由な発想に火をつけます。

子供たちは巨大な画用紙を前に、最初は「どうやって切ろう」と迷っていましたが、藝大生のサポートを受けながら、次第に大胆にハサミを動かし始めます。左右対称に切り抜く技法を教わると、中には「花びらを大好きな虫の形にしてみよう」と工夫する子も。針金で骨組みを作り、特殊な質感の紙やペンで装飾を施すと、会場には個性豊かな大輪の花が次々と咲き誇りました。
完成した花を手に取った子供たちは、「妖精になったみたい!」と大はしゃぎ。花を持って歩き回ったり、頭の上にかざしてみたり。自分の身体を超えるスケールの作品づくりを通して、自らの感性が空間いっぱいに広がっていくような創造の喜びを体感しているようでした。

打楽器から広がる楽しい音の世界
「藝大とあそぼう 『打楽器解体新書』」

小学校、中学校の音楽の授業でも必ず触れる、鉄琴や木琴、太鼓などの打楽器。その、子供たちにとっても馴染みのある打楽器を使って、音楽学部の藤本隆文先生をはじめとした先生方や学生・卒業生たちが音楽の魅力を教えてくれる演奏会「藝大とあそぼう 『打楽器解体新書』」が、美術学部の大石膏室を会場にして行われました。

演奏会は、客席後方から太鼓を打ち鳴らしながら登場する藤本先生のパフォーマンスで幕を開けました。空気を震わせるように大きく響く音から、踊り出したくなるような軽快でリズミカルな音まで、ひとつの太鼓から広がる音の世界に子供たちは釘付け。その後も、マリンバやコンガ、シンバルなどの打楽器を使って、ラテンやクラシック、現代音楽といった、幅広いジャンルの曲が演奏されると、ときに身体を揺らしながら、みんな真剣にその様子を見つめていました。
合間には、「この楽器、学校の音楽室でも見たことあるかな?」という藤本先生の質問に、「知ってる、タンバリン!」「トライアングル!」と子供たちが嬉しそうに答える一幕も。見慣れた打楽器が織りなす、豊かな音の世界を体験することができました。

自分だけの世界を音に込める楽しさ
「日本の楽器『尺八』 聴いてみよう・吹いてみよう」

大学本部棟の芸術未来研究場では、伝統楽器・尺八の調べが響きました。「日本の楽器『尺八』 聴いてみよう・吹いてみよう」は、藤原道山先生の指導のもと、尺八の基礎を学び、演奏体験ができるプログラムです。
藤原先生から「吹くのではなく、あくびをする時のように口の中を広く保ち、息を『吸う』感覚でやってみましょう」という、具体的なアドバイスを聞き、子供たちはすぐに実践してみます。「姿勢、呼吸、そして首の動きが大事なんだよ」とコツを教わると、最初は「音が出ない!」と悪戦苦闘していた子供たちの尺八から、次第に「ポー」という柔らかな音が漏れ始めました。あえて「風の音(倍音やノイズを含んだ音)」を出すことも重要な表現技法の一つであると教わります。
最後は、全員で楽曲『JIJIMUGE(じじむげ)』のアンサンブルを体験。タイトルには、「自由であること」「一つになること」という意味が込められていると伝えられた後、藤原先生の奏でるメロディに合わせて、子供たちが思い思いの「風の音」を吹き込みました。

質問コーナーでは、子供から「尺八のどこに惹かれたんですか?」という問いが投げかけられました。藤原先生は「最初は音が鳴らなくて悔しかった。でも、できないからこそ面白い。今でも新しい発見がある、チャレンジしがいのある楽器です」と笑顔で答えます。その言葉を受け、難しいからこそ面白いという魅力を知った子供たちは、自ら音を響かせた特別な時間の余韻を大切に持ち帰るように、満足げな表情で会場を後にしていました。

朝顔がつなぐ、上野桜木の物語
「地域でのアート活動 フィールドワーク」

藝大部屋を拠点にした日比野克彦先生が率いる「地域でのアート活動 フィールドワーク」では、「大学」を飛び出し、上野桜木の街全体を学びの場とした活動が行われました。テーマは、「明後日朝顔プロジェクト」。種を介して「人と地域」をつなぐこの活動の「共生の種」は、ここ上野でも住民の方々の手によって大切に育てられています。
このプロジェクトでは、朝顔を会話や交流を生み出す「人と人を繋ぐメディア」と捉えています。子供たちは「見習い記者」となり、今回のフィールドワークの目的である「明後日新聞」を作るため、朝顔をきっかけとした地域の物語を拾い集める取材へと出発しました。
サポートのスタッフや藝大生と共に6つの班に分かれ、畳屋さんや和菓子屋さんといった地域の拠点を訪ねた子供たち。地域で工房を営む方のもとを訪れた班は、「暑かったでしょう」という温かい言葉と共に、笑顔で迎え入れられました。まずは共通の話題である朝顔をきっかけに会話が始まり、次第に話題は地域の方の仕事や暮らしのことへ。丁寧に話してくれる言葉を逃さないよう、子供たちは熱心にメモを取っていました。

部屋に戻ると、取材した内容を班ごとに文章やイラストで「明後日新聞」としてまとめていきます。編集担当のスタッフたちが担う最後の仕上げの様子をモニターで見守りながら、新聞の完成を待ち望む子供たち。
出来上がったばかりの新聞を手にすると、そこには自分が歩き、聞き、感じた地域の物語が刻まれていました。「みんなのお話を聞くと、頭の中に絵が浮かんでくる。それが想像の力なんだよ」という日比野先生の言葉通り、子供たちは新聞作りを通じて、自分たちの住む世界をより深く、色鮮やかに捉え直していました。

どのプログラムも集中力が必要とされるものでしたが、先生や学生の温かな伴走により、子供たちは「自分が参加した」「自分の手で完成させた」という確かな手応えを得ることができました。
当日の上野キャンパスでは、9月に開催される学園祭「藝祭」に向けて、キャンパスの各所で巨大な造作物の制作が行われていました。目の前で作品づくりに打ち込む藝大生の姿、自分たちの制作に寄り添ってくれた学生たちとの交流、そして専門的な設備や道具が備えられたアトリエ。そのすべてが、子供たちにとって身を置くだけで心が躍るような特別な空間だったはずです。この日体験した「本物」との出会いは、自らを表現し、発信していくための確かな一歩となったことでしょう。

取材・文:安達友絵、小原明子
撮影:菅原康太

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