部屋に戻ると、取材した内容を班ごとに文章やイラストで「明後日新聞」としてまとめていきます。編集担当のスタッフたちが担う最後の仕上げの様子をモニターで見守りながら、新聞の完成を待ち望む子供たち。
出来上がったばかりの新聞を手にすると、そこには自分が歩き、聞き、感じた地域の物語が刻まれていました。「みんなのお話を聞くと、頭の中に絵が浮かんでくる。それが想像の力なんだよ」という日比野先生の言葉通り、子供たちは新聞作りを通じて、自分たちの住む世界をより深く、色鮮やかに捉え直していました。
どのプログラムも集中力が必要とされるものでしたが、先生や学生の温かな伴走により、子供たちは「自分が参加した」「自分の手で完成させた」という確かな手応えを得ることができました。
当日の上野キャンパスでは、9月に開催される学園祭「藝祭」に向けて、キャンパスの各所で巨大な造作物の制作が行われていました。目の前で作品づくりに打ち込む藝大生の姿、自分たちの制作に寄り添ってくれた学生たちとの交流、そして専門的な設備や道具が備えられたアトリエ。そのすべてが、子供たちにとって身を置くだけで心が躍るような特別な空間だったはずです。この日体験した「本物」との出会いは、自らを表現し、発信していくための確かな一歩となったことでしょう。
取材・文:安達友絵、小原明子
撮影:菅原康太