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2026

「なくしもの美術館」をつくろう!〈東京都美術館〉 ~子供たちがアーティストと共に、100年の記憶に新たな色を重ねる~

キッズユース・ミュージアム

2026/11/02

「なくしもの美術館」をつくろう!〈東京都美術館〉

~子供たちがアーティストと共に、100年の記憶に新たな色を重ねる~

実施概要
東京都美術館の開館100周年を記念して開催された「『なくしもの美術館』をつくろう!」は、アーティストの武藤亜希子さんと子供たちが、美術館の歴史や建築をモチーフにインスタレーションをつくり上げるプログラムです。子供たちは、ワークショップを通じて美術館の記憶に触れ、美術館が紡いできた100年の記憶に、子供たちならではの自由な彩りを重ねていきました。4日間にわたって行われたワークショップの8月1日、2日の様子をお伝えします。

■取材日
2026年8月1日(土)「p+l+a+n+t イチョウ」
2026年8月2日(日)「ぐるぐる+さんかく」
■取材場所
東京都美術館



8月1日(土)
美術館100年の歴史を見守る「イチョウ」に新たな彩りを

夏休み真っ盛りの東京都美術館。会場へと続く通路を進むと、鮮やかな赤い壁に「なくしもの美術館」の文字が見えてきました。
入り口にある、アーティスト・武藤亜希子さんが制作した旧館の正面入り口と彫刻陳列室を表した作品をくぐると、色とりどりの布でつくられた「大きなイチョウの木」やブロッククッションの「新館の床タイル」が目に入ります。

1926年建築のかつての旧館と、1975年建築の現在の新館の記憶が交錯するこの場所で、東京都美術館を100年ずっと見守り続けてきた「イチョウの木」をモチーフに、「p+l+a+n+t イチョウ」のワークショップが行われました。
参加した子供たちは、「イチョウ」の枝のパーツをつくり、それらをつなぎ合わせて一本の大きな木へと成長させていきます。
会場はこれまでのワークショップでつくられた「イチョウの木」や「穴あきタイル」で彩られていました。さらにこれからつくる作品が加わることで、この空間はどのように変化していくのでしょうか。

自分の感性で選び取る

ワークショップ会場には、武藤さんが用意した、目にも鮮やかな色紙、市販の模様入りの包装紙、紙テープなどが机の上にずらりと並んでいます。
参加した子供たちは、まず「大きな枝」と「小さな枝」の台紙に貼り付ける紙を選んでいきます。
「今日は水玉の気分かな」「こっちのキラキラした模様がいいな」
子供たちの目はキラキラと輝き、迷うことなく自分の「これ!」を手に取っていきます。武藤さんは一人ひとりに、「その色、効かせ色だね」「選ぶのが早い!」と、子供たちの直感を肯定する言葉をかけていきます。
ハサミを使って枝の形を切り抜いたり、枝の上に思い思いの模様をつくり出したりする表情は真剣そのもの。
この日は親子で参加する姿も見られました。子供以上に本気に取り組む大人の姿を見て、「お父さんは、この色にしたんだ。僕はこれ!」と子供たちも嬉しそう。対話や制作を通じて、自分だけの「形」を見出していきました。

ひとつひとつの「枝」がつながり、ひとつの大きな「木」へ

出来上がった枝は、会場の壁に貼りつけ、つなげていきます。
「こっちの向きに枝を伸ばしたい」「この色の隣に貼ってもいい?」
子供たちは自分の「イチョウの枝」をどの方向に伸ばしたいかを考え、配置を決めていきました。最後の枝は、天井近くまで伸ばしていきます。できあがったのは、生命力溢れる大きな木。
自分の枝が貼られた木を見上げながら、「枝の模様を、顔に見えるように工夫してみた」「緑色が好きだから、いろんな緑でコーディネートしたの」と、子供たちはそれぞれのこだわりを聞かせてくれました。
一人の小さな「枝」が、たくさんの人の「枝」と合わさることで、大きな「木」となり、空間が変化していく。一人ではなく、みんなで作品をつくりあげる醍醐味を、肌で感じる時間となりました。

8月2日(日)
美術館に隠れた、たくさんの「さんかく」

プログラム最終日、この日のモチーフは、東京都美術館にたくさん隠れている「さんかく」です。建築家・前川國男により設計された現在の新館には、「おむすび型」と呼ばれる三角形の机や階段など、独自の意匠が随所に見られます。
子供たちは、100年の歴史の後半を彩ってきた「さんかく」を取り入れて、「なくしもの美術館」を飾るモビールを制作する「ぐるぐる+さんかく」に挑戦しました。

平面から立体の「さんかく」をつくり出す

「東京都美術館には、三角形のものがいっぱいあるそうですよ」
武藤さんの語りかけから制作がスタート。まずは色とりどりの包装紙を選び、渦巻き状の切り込みが入った三角形の台紙に貼り合わせます。最初は少し緊張の面持ちをしていた子供たちも、好きな包装紙を手にとると一気に集中モードに入っていきました。

次に、貼り合わせた包装紙を台紙の形にあわせてカットした後、渦巻き状の切り込みに沿って、さらにハサミで切っていきます。
「紙を動かしながら、渦をカットしてください。ゆっくりでいいよ」
武藤さんのアドバイスを受け、慎重に、そして大胆にハサミを動かす子供たち。さらに、モビールのおもりとなる立体の「テトラさんかく」を折り紙でつくります。武藤さんと一緒に、「半分に折って、開いて、真ん中をとめて……」と手順を確認しながら進めると、ぷっくりと膨らんだ三角形ができあがりました。「仕上げの時に、つぶれないようにね」という武藤さんのアドバイスどおり、子供たちは一つひとつの工程を丁寧に進めていきます。

自分の好きな模様に彩った「さんかく」をお友達の「さんかく」とつなぎ合わせると……ビヨーン!「ぐるぐる+さんかく」の完成です。

人によって変化しつづける「美術館」

完成した「ぐるぐる+さんかく」を手に、武藤さんと子供たちは会場内の「藤棚」へと移動し、一つひとつ吊り下げていきました。昨日つくった「イチョウの木」の下で、色とりどりのモビールが軽やかに揺れています。
武藤さんは最後に、「とてもカラフルな空間になりました。ぜひ帰りに、この美術館の『さんかく』を探してみてください」と伝えました。
終了後、藤棚の下で自分の作品と一緒に写真を撮ったり、親子で感想を語らったりする姿が見られました。自分のつくった作品によって、美術館の風景が確かに変化していく。その体験を経て、東京都美術館がこれまでよりも身近で愛着のある場として感じられたことでしょう。

1926年以来、1億4千万人以上が訪れた東京都美術館。このワークショップに参加した子供たちの思い出もまた、次の100年を彩る新たな記憶として積み重なっていきます。

取材・文:小原明子
撮影:大城為喜
一部写真提供:小原明子[8/1一部]

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